大判例

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東京高等裁判所 昭和56年(行ケ)101号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は当事者間に争いがない。

二 そこで審決取消事由について判断する。

1 本願発明の要旨が審決認定のとおりであり、引用例に審決認定のとおりの自動せん光装置が記載されていることは、原告の認めるところである。

そして成立に争いのない甲第五号証によると、引用例は名称を「反覆発光装置に於ける光量調整装置」とする発明の特許公報であるが、その発明の詳細な説明の項の冒頭に、引用例の発明を概略的に説明する「本発明は……ストロボ発光装置に於て、複数個のコンデンサーを並列に接続したものを、電源及び発光管に直列に接続し、該コンデンサー群の上位コンデンサーの放電パルスから一定時間遅延せしめた起動パルスで順次に下位のコンデンサーを放電せしめ長時間単一発光と同等ならしめることを特徴とする反覆発光装置に関するものであつて、発光間隔を極めて短かくすることができるものである。」(甲第五号証一頁左欄下から二八ないし一七行)との記載があり、次いで、図面に示された回路図(別紙図面)によつてその発明を説明する部分には、その反覆発光の過程につき、「発光スイツチを作動させると接点1は閉じ、1´は開く(図は作動状態を示す)から、……主コンデンサー5の電荷はリレー放電管21、主放電管18を通して放電し、発光する。」(同一頁右欄六ないし一二行)、「若し主放電管18の耐電圧が高く、リレー放電管21の放電によつて誘発されない時は公知の方法によりトリガー電圧を加えればよい。次に主コンデンサー5が放電し、その端子電圧が下ると、……コンデンサー26´及び抵抗27´よりなる微分回路とコンデンサー28´及びダイオード29´よりなるクリツプ回路により、或る時間遅れてリレー放電管21´の起動極22´が放電開始電圧に達し、主コンデンサー5´の電荷がリレー放電管21´主放電管18を通して放電し、二回目の発光が行われる。以下同様に主コンデンサー5´´、5´´´(原文には「5´、5´´」とあるが「5´´、5´´´」の誤記と認められる。)……が順次放電し、発光が繰返される。」(同一頁右欄一五ないし二七行)、「発光スイツチを切ると始めの状態に復帰する。」(同二頁左欄一行)との記載があり、最後の段に、発明の効果につき、「本発明は主コンデンサー5、5´、5´´……を電源及び主放電管に並列に接続し、予め充電してあるから、単一のコンデンサーを使用して反覆発光せしめるものに比し、発光光量を大となすと共に、電子的遅延回路群の使用により発光間隔を極めて短かくすることが容易で、従つて運動する被写体に対してもあたかも長時間単一発光と同等の効果を有する。」(同二頁左欄七ないし一四行)との記載があることが認められる。

これらの記載と回路図(別紙図面)及び前示審決認定の引用例の装置の構成によれば、引用例の発明は、ストロボ発光装置において、従来の単一コンデンサーを使用しその電荷を一回で発光させるものに代えて、発光間隔を極めて短くしたパルス列状の反覆発光により、右従来のものの「長時間単一発光と同等の効果」を得ようとするものであること、その反覆発光の過程は、発光スイツチを作動させると、まずリレー放電管21が起動して放電導通し、これを介して主コンデンサー5の電荷が主放電管18に加えられてこれが発光し、これに続いて複数個並列に設けられた各電子的遅延回路(コンデンサー26´、26´´……及び28´、28´´……抵抗27´、27´´……)が極く短い一定間隔で発生させる起動パルスにより順次各リレー放電管21´、21´´……が起動されて放電導通し、これを介して順次各主コンデンサー5´、5´´……の電荷が主放電管18に反覆的に加えられてこれが反覆発光するものであることが認められる。右事実と通常のストロボ発光装置においてその発光時間が一〇〇〇分の一秒以内であるとの原告も自認する事実によれば、引用例のものの反覆発光の時間間隔は長くともこれを超えない程度と認められる。この時間間隔で次回の発光動作が行われれば、ストロボ管内には前回の発光によるイオンが残存しているから、各回の発光のためにトリガ電圧を印加しないでよいことは原告の自認するところである。

そうとすると、引用例のものにおいて、「複数個のコンデンサーを並列に接続したものを、電源及び発光管に直列に接続し、該コンデンサー群の上位コンデンサーの放電パルスから一定時間遅延せしめた起動パルスで順次に下位のコンデンサーを放電せしめ」(甲第五号証一頁左欄下から二四ないし二〇行)る時間間隔は、発光管に動作用電力として供給された先のパルスの消滅後発光管中のイオンが消滅するのに要する時間よりも長くはならないように定められていること、すなわち、引用例のものが本願発明の原告主張の構成要件を具備していることは明らかであるといわなければならない。

原告が取消事由の根拠として主張するところは、右認定の事実に照らせば、被告がその反論において主張するとおり、いずれも理由がなく採用することができない。

2 以上のとおり、審決には原告主張の相違点の看過はなく、審決にこれを取り消すに足りる違法の点は見当らない。

三 よつて、原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕 本件における特許請求の範囲は左のとおりである。

一個のせん光管と;該せん光管を導通可能状態にトリガする手段と;装置全体に対して電力を供給するための電源と;該電源と上記せん光管との間に直列に接続されており、上記せん光管が導通可能状態にトリガされると同時にパルス列を発生してこれを上記せん光管の動作用電力として上記せん光管に供給するパルス発生手段と;上記パルス列が供給されるごとにこれに応答して発生する上記せん光管の光によつて照射された対象物からの反射光を受光し、該反射光の受光量が所定値に達すると制御出力信号を発生する光検知回路と;該光検知回路の制御出力信号を上記パルス発生手段に供給して該パルス発生手段の動作を停止させ、さらにパルスが発生するのを阻止する手段とからなり;上記パルス発生手段によつて発生されるパルス列のパルス相互間の時間間隔は、上記せん光管に動作用電力として供給された先のパルスの消滅後該せん光管中のイオンが消滅するのに要する時間よりも長くはならないように定められており、さらに上記電源の数およびパルス発生手段の数は上記パルス列のパルスの数には無関係に定められていることを特徴とする自動せん光装置。

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